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奈良県広域消防組合

あしあと

    CROSS×TALK【隊員×消防長】Vol.6

    • [公開日:2026年9月30日]
    • [更新日:2026年9月30日]
    • ページ番号:4178

    住民の命と安心を守る最前線 〜救急ワークステーションの挑戦と職員たちの熱き想い〜

    消防組合の魅力・人柄・業務のリアルを多角的に発信する。頑張っている職員にスポットライトを当て、消防職員を身近に感じてもらうことをねらいとするクロストーク企画。今回は、年間六万件以上の救急出動の根幹を支える救急ワークステーションの皆さんに、德永消防長が直接お話を伺いました。

    (左から)德永消防長、井上消防司令、山本消防司令補、西村消防士

    救急の“質”を支える最前線。救急ワークステーションの役割とドクターカーの運用

    德永消防長:皆さん、こんにちは。今回は救急ワークステーションで活躍されている三人にお話しを伺います。まずは井上消防司令、救急ワークステーションの主な任務について教えてください。

    井上消防司令:当ワークステーションの最大の任務は「教育」です。研修生に優れた救急技術を身につけてもらうことはもちろん、その成果をいかに地域住民の皆さんへのサービス還元につなげるかという点に注力して研修を行っています。

    德永消防長:では山本消防司令補、もう一つの柱である「ドクターカー運用」について、通常の救急隊との違いは何でしょうか?

    山本消防司令補:医師、看護師、そして消防の三者がチームを組む点です。消防は現場のマネジメントを、医師は処置と搬送先の決定を担います。看護師は私らと同様の現場のマネジメントや医師の補助をしたりします。この多職種の三者が連携するため、通常の救急隊とは異なる綿密なコミュニケーションや、現場で合流する救急隊との連携調整が私たちの腕の見せ所となります。

    德永消防長:西村消防士は8月20日から半年間、救急救命士の養成課程に入校するとのことですが、今の心境はどうでしょうか?

    西村消防士:不安と期待の両方ありますが、それ以上に「やってやるぞ!」という頑張りたい気持ちが勝っています。これまで培った知識と技術に磨きをかけ、自分の理想とする救急救命士に近づけるよう全力で挑みます!

    德永消防長:奈良県広域消防組合には392名の救急救命士が活躍しています。先輩たち全員が通ってきた道なのだから、西村消防士にできないことなんて何もない。不安なんか吹き飛ばして、大きな期待と希望を持って頑張ってきてほしいです。


    救急ワークステーションの役割について語る井上消防司令

    対話で育て、連携で支える。救急ワークステーションの仕事

    德永消防長:井上消防司令、効果的な救急救命士の教育の秘訣とは何でしょう?

    井上消防司令:救急ワークステーションでは、一方的に教えるのではなく、相互のディスカッションを通じた指導方法を取り入れています。以前は、指導者から研修生へ一方向に伝える指導が中心でしたが、現在は、研修生が何を考え、どのような意図を持って活動しているのか、その意見を引き出すことに重点を置いています。こうした対話型の指導は、教育効果が非常に高いと感じています。

    德永消防長:なるほど。井上消防司令は副ワークステーション長という立場ですが、その立場としてモットーとしていることや指導するうえで大事にしていることはありますか?

    井上消防司令:私が大事にしているのは、場の空気感をつくることです。訓練の場で研修生が救急ワークステーションという場所に対して委縮してしまうと、本来の力を発揮できないと思っています。だからこそ、持っている力を発揮できる空気感づくりを大切にしています。

    德永消防長:昨日、後期の救急救命士課程の入校に伴い辞令を交付された新入生たちが、「憧れの先輩」として山本消防司令補の名前を挙げていましたが、そのことについてどう感じていますか?

    山本消防司令補:率直に嬉しいです。ただ「これをしたから」と言える具体策があるわけではありません。研修生に響く指導は一人ひとり違い、正解は今も模索中です。だからこそ、誰もが話しやすい雰囲気を整えることを大切にしています。そのうえで反応のよい研修生には、やり方に合わせて丁寧に指導する。結果として「指導がいい」と言ってくれる人が増えるのは嬉しいです。

    德永消防長:西村消防士、救急ワークステーションで得たものは大きいですか?

    西村消防士:研修生と共に学び、最近は教える立場も経験する中で、「人に教えることが自身の知識を最も深くする」という貴重な気づきを得ました。

    研修生の教育について語る山本消防司令補

    「出会い」と「成長」が原動力!私たちが感じる仕事のやりがい

    德永消防長:皆さんが日々感じている仕事のやりがいを教えてもらえますか?

    井上消防司令:この仕事のやりがいについては、救急救命士を目指して消防職員になった当初から、「住民の方に寄り添う救急救命士でありたい」という思いが今も変わらずあります。現在は指導的な立場になり、研修生を育てること、そして育った救急救命士がより良い住民救急サービスを提供できるようにすることを考えながら業務に取り組んでいます。こうした仕事は、自分の原点に立ち返れるものであり、今のやりがいだと感じています。

    山本消防司令補:研修をすること自体にもやりがいはもちろんあるんですけど、救急ワークステーションに来て特に感じたのは、「人との出会い」がものすごく多いということです。病院関係の方もいますし、救急ワークステーションに立ち寄る方も多いので、いろんな人と出会います。それに伴って、イベントや食事会といった機会も増えて、人間関係が一気に広がっています。仕事面のやりがいというと少しずれるかもしれないんですけど、やりがいという意味では、こうした「人との出会い」が大事だなと感じています。「顔が見える関係」をつくれることが仕事にも生きる、という実感がすごくあって、今いちばんやりがいを感じている部分です。

    西村消防士:研修を一部担当させてもらうことがあるんですが、その中で、これまでは自分の知識向上ばかりに重きを置いていました。しかし、研修生の方や一年目の職員が研修に来ることもあるので、その職員に研修をすることで自分の理解もより深まり、「教える」ことに一番やりがいを感じるようになりました。

    あの日の救急隊の背中を追って…私たちがこの道を選んだ理由

    德永消防長:皆さんが消防士を目指したきっかけは何でしたか?

    井上消防司令:消防に入ったきっかけは「救急救命士になりたい」という思いでした。その背景には、家族が救急搬送された経験があります。そのときに来てくださった救急隊員の方が、強い安心感を与えてくれました。自分も、救急車を呼ぶ人にとって人生で一度あるかないかのその瞬間に、安心感を届けられる人間になりたいと思い、この職業を選びました。

    山本消防司令補:救急救命士の仕事をよく知らないまま入職しましたが、現場で人の役に立ち、感謝される仕事がしたくて消防を選びました。現場志向は今も変わらず、体づくりを続けながら救急救命士の魅力を知り、救急救命士となって今に至ります。

    西村消防士:人の役に立ちたいこと、そして直接感謝される仕事に就きたいことから、消防の道を志しました。また、地元に恩返しがしたいという思いで奈良県広域消防組合を選びました。当組合は山岳から都市部まで多様な現場を経験できる環境があり、それは当組合ならではの特徴で、消防士としてやりがいを感じる部分だと思います。

    消防を目指した理由について語る西村消防士

    悔しさと無力感を越えて強くなる…「仲間の絆」が私たちを支える

    德永消防長:これまでの消防人生で、最も苦しかったことは何でしょうか?

    井上消防司令:個人的に一番苦しかったのは、救急現場で子どもと同い年の子を助けられなかったことです。そのとき、「もっと知識や技術があれば救えたかもしれない」という思いが強く残りました。だからこそ、今よりもっと頑張らなければならないと感じ、与えられている使命について改めて深く考えるようになりました。さらに、能登の震災に行ったときも、あの光景を目の当たりにして胸が痛みましたが、それを自分の励みにして、「ここで立ち止まってはいけない」と強く感じました。

    山本消防司令補:現場では、1〜2年目の頃、対応に必死で病態を十分に理解できず、救えなかった経験が今も残っています。もう一つは指導面で、小隊長になり「何とかしたい」と思うあまり相手に踏み込みすぎ、うまく相手の成長に繋がらず悩んだことです。負担の調整や距離感の工夫で改善できた一方で、同じ状態に陥る怖さも感じました。

    一番嬉しいのは「後輩の成長」と「患者さんの社会復帰」

    德永消防長:これまでで最も嬉しかったことや良かったことは何でしょうか?

    山本消防司令補:先ほど、私のことを「憧れの先輩」と言ってくれたという話があったと思うんですけど、それはもちろん嬉しいです。でも、それ以上に嬉しいのは自分の後輩のことですね。例えば、後輩がさらに別の後輩の目標になっていると聞いたときは、本当に嬉しかったです。「自分の後輩がそこまで成長しているんだ」と感じられる瞬間ですし、今こういう立場にいるからこそ、そういう話を聞ける機会があります。自分が褒められるよりも、「自分がやってきたことは間違っていなかったんだ」と思えるので、すごく嬉しいです。

    西村消防士:私は2つあります。1つ目は、自分の手で心肺停止の傷病者に心マッサージを行い、社会復帰まで導けたことです。後日、その方が消防署までお礼に来てくださって、「自分の手で救えたんだ」と実感できました。救急救命士を目指すきっかけの一つにもなり、いちばん嬉しかった出来事です。2つ目は、指導に関することです。昨年の救急ワークステーション研修期間中、研修生に「いちばん思い出に残ったことは何ですか?」と聞いたところ、私が担当した指導内容が心に残っていたと言ってくれました。しかも私がいないところでそう話してくれていたと聞き、自分のやり方は間違っていなかったのかな、とやりがいを感じました。

    これまでの活動について語る三人

    目指すべき背中と、未来へ向けた熱い抱負

    德永消防長:皆さんの目標とする先輩像や今後の抱負や目標を聞かせてください。

    井上消防司令:目標にしていた先輩はいます。これまで多くの先輩方にさまざまなことを教えていただき、育てていただきましたので、「この人」と特定の名前を挙げることは控えたいのですが、特に印象に残っている方がいます。その方は、部下の話をよく聞き、技術や知識も豊富でありながら、それを偉ぶることなく、下の意見にも真摯に耳を傾けてくれました。そうした姿に憧れがあり、自分もそうなりたいと思っています。 今の目標は、この組織のボトムアップを図ることです。質にこだわって仕事をしたいと思っています。そのためには、自分自身がもっと知識を身につけること、そしてさまざまな方とコミュニケーションを取り、話す場に参加することが必要だと考えています。そうした場からこそ、アイデアも得られると思うからです。奈良県広域を「もっと全国に知ってもらえる消防本部にしていきたい」それが目標です。

    山本消防司令補:目標にしている先輩はたくさんいます。尊敬するのは、自分にないものを持ち、自分にできないことができる人です。副ワークステーション長をはじめ身近にも多く、関わりを深めるほど学びが増えています。全部は真似できませんが、「すごい」と思った点を一つずつ取り入れたいです。直近の目標は、今の環境にいる間にできるだけ多くの人に出会い、研修生に自分の知っていることを伝え、逆に学ぶことです。その中で情報共有と自分のレベルアップを進め、任務を全うしたいと思います。将来、現場でどんな役割であっても、「この人がいると助かる」と思ってもらえる存在であり続けたいです。

    消防の仕事が「楽しい・好き」と言える職場を、みんなの力で!

    德永消防長:最後に、これまで消防の道を選んでどう感じていますか?

    井上消防司令:30年間、この道を選んでよかったと心から思っています。というのも、子どもが同じ仕事に就き、オンライン面接の場で本人から「父親の姿を見て消防の仕事に就いた」と言われたとき、胸が熱くなったからです。

    山本消防司令補:自分自身もまだ20年足らずですが、これまでやってきて良かったと思います。これから別の道に進む、ということは自分にはあまり想像できません。良かったと思う一方で、最後まで全うできるように、しっかり取り組まなければならないという重圧も感じています。仕事自体は本当に自分に合っていると、今の環境では思っています。

    西村消防士:この道を選んでから、年々やりがいを感じており、自分に合った職業だと思っています。救急の道を選び、救急救命士として活動していくうえで、奈良県広域がいちばん良いと感じています。というのも、さまざまな先輩がいらっしゃることに加え、隣にいる井上消防司令や山本消防司令補を見ても、関西の中で奈良県広域の救急部門は一歩進んでいるのではないか、という印象を受けるからです。奈良県広域で救急救命士を目指してよかったと、年々強く感じています。

    德永消防長:皆さんは、研修も含めて、非常にレベルの高い取り組みをしてくれています。奈良県広域を選んでよかったと思ってくれたことは、私としても本当にうれしいです。 最後に、私から皆さんへの期待とお願いです。先ほども話に出たとおり、今年のスローガンは二つ設定しています。 一つは「利他の心を持つ職員であること」、そして「利他の心を持つ組織であること」。これは去年からの継続で、だいぶ馴染んできています。自分以外の誰かのために、という気持ちです。 もう一つは、「消防の仕事は楽しい」「消防の仕事が好き」と思える職場づくりを目指してほしい、ということです。そして、それを実現するいちばんの近道は、やはり近しい先輩、いい先輩に出会うことだと思います。「こんな人が上だったら先が思いやられるな」と思う組織では、なかなか夢が持てません。だからこそ、「いい先輩に出会えた」と思ってもらえる先輩であり続けてほしいし、そう思ってくれる人がどんどん増えるように取り組んでいただけたら、大変ありがたいと思います。 年間六万件以上の救急出動の根幹を支える「質の担保」に関わっていただいている皆さんですから、引き続きよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

    救急ワークステーションの出動スタイル

    ※この対談では、日々の過酷な救助・消火活動の裏にある葛藤や、仲間を思いやるチームワーク、そして職務に対する強い使命感を語っていただきました。「多くの職員に光を当てたい」という思いから生まれた本企画です。

    記事とあわせて、救急ワークステーションを紹介した動画「救急ワークステーションってどんなところ?」もYouTubeにて配信中です。ぜひあわせてご覧ください。